第二百六十章 金貝よりの遺産 -5

一切を裂絶つ風の席が吊艙の外の半透明力場を揺らし揺蕩わせた。

天際の飛艇は迅速に一段の距離を後退した。沈悶至極の巨响は蛮横に、稳かに立とうと努める艙内の衆人の耳膜に灌ぎ込み、思緒さえも共に轟鳴の中で空白に近き粉碎と炸け散った。

地面上では、拡散する次声波の衝撃が地面の樹木を瘋狂に後方へと傾倒せしめた。

細碎なる樹枝は体を離れるや否や一切を呑噬する白光の中で灰燼と化した。

たとえ二十公里外の地面近くの人といえども、斉しくあたかも巨獣の地底にて翻身するかの如きを感受し、多くの人は目蓋を閉じていても、隔絶し得ざる刺目なる白き光を見た。

更に遠き小村庄や鎮の内では、玻璃窓が人心をして心悸せしむる龟裂の顫音を発し、続いて外界よりの盛夏の過境の如き陣々の暖風を隔絶した…

世界各地で世界之舟の飛空艇を転播する人々が見たのは、地平線上に什羅克城の嘗て屹立せし場所にて、一つの巨大無比なる火球が翻滚し膨脹し上昇し、辺縁が地獄の如き扭曲せる白色を泛べているところだった。

「金貝…」

「遺産行動…」

人々の目光はこの一道の天を貫き地を覆う雲冠貝殻に緊しく拽かれ幕布へと拖られていった。

雲冠は蔚藍の天幕の下に肆意に舒展し、毀滅の美感を帯び、あたかも大地が天空に献ずる一朵の死亡の花の如くであった。

全ての頭蓋は朦朧としていた。

「城市が…なくなった…」一つの声が夢呟の如く言った。衆人は緩慢に反応した、何が起こったのかを。

全ての建築が形容し得ぬあの爆発に摧毀されたのだ!

一股の戦慄感が人々の肌膚を劃過した!

「先ほど念誦されたあの城市名簿!」

ある人が顫音を帯びた巨声で吼えた:

「まさか全て…」

彼らの脳中に浮かび上がったのは、数十上百の城市の上空に、それぞれ一架一架の無人操縦の螺旋槳飛機が領空に逼る画面だった。

「あの種の操縦員のいない飛機…」

「あれは我々人類の製造し得るものなのか! 何故力は霧邦人の制御する魔鬼の如くなのだ!」

「あれは魔鬼ではない!」幾人かが驚恐に喊んだ、「あれは魔鬼よりも更に恐ろしきものだ、彼らは何を為さんとする、これに靠って…待て、これに靠って末日を引動する悪魔を殺すのか?!」

囲観する人々の頭は紛乱と推測し始めた。

飛空艇の下の擁擠する人群の外、一道の薄き風衣を身に纏う面目白俊の青年が、身を転じて黒の高桶礼帽を戴いた。

「時代は感受するであろう。」

一人の天上の白黒の巨幕を仰望する女も亦身を転じて随って来た:

「全ての電台は我々に黒くされた、ただ世界之舟だけは…」

「ふん、真に天賜の助手の如く、おや違う、我々の相手はこんなに仁慈ではあるまい。やはり『白堇浪潮の締造者』に靠って此の避難所計画を宣伝せねばならぬ。うむ、何か方法を考えよう。」

「偏偏に又彼が丁度空艇宣伝行動を持っている。だがまあ良い、共に遺産を取れば、かえってより多く掘り得る。」

数歩歩いた折、城市の上空に又喇叭の声が伝わった。

彼らは振り返り、全ての人と一緒に見やった。

——「全ての人はあらゆる可能なる核爆危機に注意せよ! 真正に恐怖なる核輻射塵埃が、此等の城市附近で拡散する!!!」

……

恐慌は瘟疫の如く人群中に蔓延した。だが恐慌よりも更に深きは、一種の霊魂の深処より源を発する震撼と寒意であった。世界の諸城の人々は一個の城市の瞬間の蒸発を親しく目撃し、人類の掌握し得る、神罰に近き力を目撃したのだ!

而して各国の辦公室、及び其の他の全て放送を受信し、且つ此の事に關注する場所では。

收音機の中の公告の声は爆発の発生の瞬間に、一声の尖鋭たる、一切の頻率を覆蓋する鳴響に打断された!

続いて死寂に陥った。

「これは…」

辦公室の中は針の落つるも聞こえんばかりだった。全ての人が原地に僵硬し、顔上の血色は尽く褪せた。

「…核爆だ。」

……

飛空艇は瘡痍の如き大地の上空で遠遠に遙視していた。

相関する資訊の記憶を有す地球人は、最早何の播報次序をも在乎しなかった。彼らは克風筒を掴み、思い付く限りの核災難に関する防護措置を、かくの如き混乱せる播報の中で、伝播して行った。

城市各処各界の人々は、難以置信の思いで霧民たちの告知する一条一条の注意事項を遙かに聴いていた。

——「爆発中心より十数公里から三十数公里範囲の区域では、数時間内に人をして悪心や嘔吐の症状を生ぜしめるであろう…」

——「防護服なくば、或いは十分及時の治療を行わねば…怪病の中で死に至る…」

神奇なる霧邦人が、まさか此の如き爆弾を懼れているとは。

「核輻射?」

放送中の恐怖の理論は、長街の男女老幼をして理解し難からしめた。

だが彼らは自らを強いて信じた。既に崩碎し毀滅した金貝の科学者たちが、末日の来臨の前に霧邦人すらも恐懼せしむる造物を作り出せたのだと信じることを。

「世界上に、本当に此の如きものがあるのか?」

核輻射。それは宛ら無形の悪魔、たとえ既に焦黒と化しつつある大地上といえども、なお数年、数十年乃至上百年に亙り盤桓するであろう!

なお理解し難いが、これは世界之舟の放送だ。

金貝聯邦の嘗ての輝煌は此刻、人を窒息せしむる恐懼を帯びて、新たに各人の脳中に印された。

……

「核輻射の当量値の検測、設備は急ぎ製作中だ。」

「其の他の城市も同じく、尽く摧毀されたことを確認。だが…南部の海水倒灌区域だけは例外だ。」

辦公室内へ戻った世界之舟の衆人は、一片の焦灼たる雰囲気の中で、大衆が各種の途徑より収集せる、非常に稀少なる核弾爆発に関する資料を聴いていた。

あの足足七八分間も念誦されし城市名簿は、あたかも一本一本の利刺の如く衆人の心中で軽く刮り動いていた。

彼らは目下のところ方法あって確認できぬでいた、「金貝遺産行動」を自称する行動人の、真実の目的が何であるかを。

何故なら明らかに核輻射区域は、近期においてはあらゆる生命の生存に不利だからだ。

嗡嗡たる議論の声の中、房門が敲かれた。青色の制服を着た施德芬国務処の人士が、礼儀正しく且つ厳謹に口を開き、衆人に歩を移して開会に向かうよう請求した。

「君は…此処の我々が全員行くのかと?」

「然り、全ての霧民先生の此度の会議への参加を請います。」

会議が何に関するかは言うまでもない。

広闊なること大劇場の如き靛青と紅色の交織装飾の会議庁の中に坐し、人々は上の施德芬首相の稿なき述説を聴いていた。

随時大都会に投下されるかも知れぬ恐怖の核弾に面し、首相は一連の呼籲を行った。

だがその後、幾つかの聴き較べて比較的良好なる消息が下半場にて披露された。

「我々の戦士が什羅克城と温瑞爾城附近で発見せる被疎散人員は、皆核輻射を阻擋し得る防護服装を身に着けておりました。」

施德芬の首相は顔を上げ、補充した、「無論、防輻射の話は全て疎散を担当せる諸々の霧邦同郷の言う所です。」

嗡嗡たる議論が伝わった。

「全て疎散の任務を受けた霧邦人は、今度の要求の提出者の真実の目的が何たるかを知らなかった。」

首相の話は衆人を驚かせ、又頗る合理とも感じさせた。此の如き襲撃はもし風声を漏らせば、必定各種の騒乱と抗力が生じよう。

「彼らは『核弾』襲撃があるとは知らなかったのだ。」

「疎散者すら知らなかったとは…」

「此の計画の制定者は、一体誰なのか? 自ら金貝聯邦と称する、どの国なのか?」

弗爾迪里希首相は二、三秒沈黙し、周囲の各大臣らが見やり、下方の議論する人々の声音は自然と淡くなった。

「目下、一分の文件が我々の元に送られて来ております、ただ、我々はその真実性を判りかねております。」

下方の霧邦人たちは皆好奇の目光を露わにした。

「我々に提供された此の文件中の表示では…」

文件の縁を捏んで肩の高さまで挙げ、克風筒に向かって口を開き、言った:「人民が核輻射区域に入りさえすれば、安全に末日の危機を度過できる、と。」

上万人の会場は一片の粛静となった。

「だが我々には検証できぬ。」

……

国会大殿の幾つかの大門より一群一群の議論する人々が歩み出た。

赶って来た趙安龍は楊子蔵と応仁瑀の出て来るのを待ち、一群の人が彼らの身辺に来たり、黒圧圧と周囲の一片の台階を占めた。

「場所を探して会議を開こう。」

楊子蔵が提案したばかりの折、一隻の手が人群の中で挙げられて言った:「俺の住む所の附近に労働工会の辦公地がある。」

……

工会の辦公場所の内、粗糲たる磚牆と高く聳える拱窓の下、大群の入り来た同郷たちは数百張の両旁に堆まれ置かれた木椅を、取り出して来て互いに手を貸して並べた。

鉄架吊燈の下の主席台の斑駁たる緑漆の長卓が楊子蔵に持ち上げられて歩み出され、人群の堆みの中に置かれた。剣一十三は手で其の上の埃を拭い、手の上の文件を卓の表面に叩き置いた。

上百道の各式各様の面容が顔を上げ来たって、翻皮の緑卓の後の楊子蔵や剣一十三たちの動作を見つめた。

「もし此の文件が真とすれば。つまり、今度の計画の実施者は実はただ…嘗ての金貝聯邦の、現在の一群の無国籍の老人たちだ。」

「金貝聯邦の遺老たち…」人群中よりかくの如き驚異の声が伝わった。

この大陸に属さざる「霧邦人」にとっては、彼らこそかえって最も其の中の艱難を体会し得るのだった。

国なく、財なく、資源なく、なお案外時代の対立に直面せねばならぬかも知れぬ。

此の如き困難の中、僅かに某の名を明かすを願わざる燎光者の投資保護に靠り、数十年前より始め、この日に応ずる為にあたかも普罗米修斯的に英勇にして且つ絶密たる研鑚を為してきたのだ。

「彼らは本来この時代の人類に属せざる奇物を齎した。」

在場の人々は心の底より敬服し始めた。続いて又先程の会議上で抛り出されたそれらの問題を想った。

此の文件の提供する対応計画は真なのか?

本当に核輻射区域に入るに靠って、かくも多くの人類が、一月後の世界末日の到来の際に、地下鉄藤の悪魘の襲撃を受けずに済むのか?

「布塵会長、それに皆さん、君たちは其の真偽をどう看る?」

「これこそ我々が確認を行わねばならぬことだ。」

楊子蔵は傍らの徳烈亜諾を一瞥し、彼に向かって肯いた。

臂を組める徳烈亜諾は軽微に鼻で長く息を吸い込み、文件を翻動し来たりて言った:

「金貝遺産の方面の説法に拠るに。彼らは近年の動物に対する試験の中で論証してきた、小型核実験の生命に対する集団殺傷が、末日悪魔の誕生回数を引動することを。」

彼は頭を上げて言った:

「該文件のデータの示す所では、引動回数は零である。」

空気は衆人の緊張の氣息を浮遊させていた。

「而して同様条件の下での生命聚集では、無核実験の中で地下悪魔を引動する回数の頻率は、則ち百分之七十。」

人々は紛紛と驚いた。

「しかも彼らはなお提到している。」

「何だ?」

「たとえ本来生命の迹象なき区域といえども、核能の洗礼に遭遇すれば、たとえ数公里の区域であれ、其の後に核輻射区域内に入る生物は、屠殺に遭った後も、未だ地下悪魔を引動する記録はない。」

「つまり…」一人が驚嘆して言った、「核輻射の区域も遮蔽を有するのか、地下悪魔のあの地表の生物を感知するに類する能力を?」

「然り。」楊子蔵が傍らで肯首した、「故に、我々が今度行わんとするのは、正にかくの如き一事の論証なのだ。」

衆人は皆頷首して肯いた。

「では、大規模なる生命は…」

「あの牛や羊たちに哀れを掛けるしかあるまい。」

大匹の家禽が、一車又一車の牛と羊が、防護服を着た軍士たちに、復古調の緑皮の円頭貨車を駆られ、本より奥徳列夫上将の反叛騒乱に因りてほぼ空城となれる温瑞爾城へと送られた。

今度の事件を負責する霧邦人たちは要求に従い、飛空艇の浮遊の中、無辜の眼神を透露する禽畜たちに対し人道主義に近き屠殺を始めた。

大片大片の動物が呼吸を失い、抽搐しつつ血水の横流する地上に倒れた。

「宛ら末日の武器の如きもの以て末日逼る災難に対応するとは、ああ…」

高空より大地上の此の一幕を俯視する莫塔夫は、珍しく憂慮悲傷の神色を露わにした。

「我々の世界は、一体どうなってしまったのだ…」

吊艙の内、玻璃窓の周囲に站つ霧邦人たちは、此の嘆息を聴いて、亦各自哀然とした、「我々にも分からぬ。」

莫塔夫は緊緊と地面を凝視した。彼があの如きものが誕生したと聞いた時、先ずは信じなかった。緊接して懐疑し、一貫して今もそうだ。

彼はこの世界に此の如き災難級別の造物が出現する事実を受け容れられなかった。しかも、あの団隊はなお自分の塔夫科電と似て、時代の阻塞を繞回することで未来よりの礼物を獲取したようでもあった。

嘗ての時代の裡には、一体なお如何なる更に高級な更に恐ろしきものがあるのか? 快楽、そして毀滅、これらはみな科学なのか…?

彼はやや神を回して窓外を注視した。

時間は一分一秒と過ぎ去った。

下方の血流河の如き焦黒たる大地上では、防護服を着た人々が飛空艇の垂らす吊梯に吊り上げられ、僅かに地面の一部の禽畜が恐懼に立ちて倒れた屍首の間に哀鳴するのみとなった。

「総指揮に報告、三時間異常発生なし。」

「報告、四時間三十分に至るまで、末日悪魔の引動の迹象なし…」

「国会に報告…午夜零時に至るまで、地下に異動なし…」

混白の吊燈の映照する辦公室の内、多くの青色の制服を着た人が緊張して待っていた。

首相は無意識に合わせた掌の双手で鼻梁を摩っていた。

大臣たちは時折頭を回して彼の机の前のあの黒い電話を見やった。每次の鈴の音の響く毎に、衆人の目光と思緒は全てそれに牽引された。

叮鈴鈴…カチ。

——「報告、十二時間に至るまで、地面に異常の変動なし。」

電話の聴筒を握る首相の呼吸は急促に数度した、「良し。」

彼は電話を置き、室内の己を凝視する衆人を注視した。

「諸位。諸位、我々はどうやら…真に…又…」彼は喉頭の自主的ならざる抽搐を堪えた。

「弗爾迪里希首相!」

「成功したのですね!」一人の大臣は自己の激動を掩飾せず立ち上がり、両臂を張り開いて喊んだ:「成功の検証を得たのですね、我々の民衆が核輻射の区域に入りさえすれば、真に末日の中で躲避し得ると…」

「然り! 少なくともそれは有り得べきことであり、非常大なる可能のあることだ!」

首相は立ち上がって烈しく手を机の面に扣きつけ、又毫不在意に疼痛を覚えず身を翻して又泣き又笑い又数声哈哈と笑った。

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